富とジェリー

映画・海外ドラマ・海外アニメの紹介と感想、独自の角度から切り込んだ考察を載せていきます。

これは事件だ『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』感想・考察①(構造編)

初日に観てきました。

個人的には、現時点でのマーベル・シネマティック・ユニバースの最高傑作だと思っています。

一言で言うと、「ついにかゆいところ全てに手が届いた」といったところでしょうか。

逆に言えば、「もっと早くこれをやって欲しかった」というのが唯一の不満点です。

 

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1.新たなバトルの構図

少し前まで、このシリーズの肝の一つである「オールスターな戦闘シーン」は、「雑魚軍団との戦い」がメインでした。

アベンジャーズ』では大量のチタウリを、『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』では大量のウルトロンを一掃することが、ヒーローたちのミッションの中核をなしていました。

しかし、これはどうにもちょっと飽きる気がするんです。

淡泊とまではいきませんが、敵の特性がみんな同じだから、戦闘の内容を工夫するのにどうしても限界がある。

また、倒しても倒してもどれだけ雑魚が湧いてくるのか分からないから、あまりスッキリしない。

これらの問題を打ち破ってくれたのが、『シビルウォー キャプテン・アメリカ』における空港での戦闘シーンです。

それぞれ個性的な能力を持った者たちが6VS6で戦うという構図は、元々あった「連携の面白さ」に、さらに「組み合わせ(カード)の面白さ」「掛け合いの面白さ」「単位という要素」をプラスし、戦闘をより多面的にしました。

シビルウォー』ではヒーローどうしが務めたその構図を、『アベンジャーズ インフィティ・ウォー』では、ついに「ヒーローVSヴィラン」で見ることができます。

これが本当に面白いし、かっこいいし、ワクワクさせられる。

ブラック・オーダーが二人組で急襲してきた序盤の戦闘シーンでは、上に挙げたような新しい魅力がさらに洗練され、進化しています。

アメリカ的な「災害救助の延長線上にある戦闘」から、粒と粒がぶつかる、より「漫画的な戦闘」、より「敵・味方両方のキャラクターを引き立てる戦闘」への鮮やかなシフト。

「中ボス」としてブラック・オーダーを登場させたのは大正解です。

 

2.「ヒーローたち」がいる世界

アベンジャーズ』でヒーローたちが共闘したのは、ニック・フューリーが仕込んだ計画であり、いわば一時的な「イベント」でした。

後の『エイジ・オブ・ウルトロン』『シビル・ウォー』では、ヒーローたちが共に活動することはイベントではなくなっていましたが、それでも規律の元に遂行される「ミッション」でした。

『シビル・ウォー』ではヒーローの活動を管理・制限する「ソコヴィア協定」が争点となっていましたが、協定を抜きにしても、MCUのヒーローたちは、特に集合する際において、わりと公的な性質を持っていたといえます。

ところが、本作では違う。

ハルクがドクター・ストレンジの家に落ちてきて、ドクター・ストレンジがアイアンマンを召喚したかと思えば、まるで「通りかかったから」と言わんばかりの雰囲気でスパイダーマンが参戦する。

そのままの流れで、一緒に宇宙にまで行ってしまう。

このように、ヒーローたちが私的に、「しれっと」集まり、共闘することによって、「ヒーローが複数存在する世界」という大前提の持ち味と、そこから広がる奥行きや可能性が底上げされています

いい意味で、コミックに近いなんでもありの世界に近づいているんです。

まさに「マーベルそのものの実写化」という感じがして最高にワクワクしますし、今後、この方向性が宿すポテンシャルは無限大だと思います。

 

3.完璧なバランスがもたらすもの

エンターテイメントにおける「笑い」の要素というのは難しいもので、なければ寂しいですが、扱い方を間違えると作品の邪魔にさえなります。

例えば『マイティ・ソー ダーク・ワールド』は、ソーが王座を継ぐ権利を自ら手放すまでの過程を描いた物語のはずですが、手あたり次第のタイミングでギャグを挟みまくったせいで、ソーの心境がどういう風に変化していったのかがほとんど読み取れず、わけがわからないことになっています。

ドクター・ストレンジ』でもそれに近い現象が起きています。

また、『アベンジャーズ』と『エイジ・オブ・ウルトロン』では(前者は意図的だとは思いますが)、周期的なまでに定期的にギャグが挟まれ、それによって生じる「コメディのリズム」が話の運びを牽引することで、作品のシリアスレベルがかなり下げられています。

(つまりお手本のような教科書通りのコメディの造形が、この点に関してはマイナスに働いてしまっている。)

逆に理想的なのは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズや『アントマン』『マイティ・ソー バトルロイヤル』で、あれだけ笑いが盛り込まれていても、シリアスなシーンの魅力が一切損なわれていません。

これは、作り手側が「サービス精神」の扱い方を理解しているからだと思います。

エンターテイメントにおいて笑いは重要な要素ですが、それでも、観客が最も興奮し、最も感動するのは「深刻さ」の先にあるカタルシスあり、最大の情熱とセンスはそこにこそ注力されるべきなのだと、彼らは分かっています。

では、ほとんど笑いの要素がなかった『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』や『シビル・ウォー』の監督を務めたルッソ兄弟が、必然的に笑いの要素が増える『アベンジャーズ』シリーズを手掛けた『インフィニティ・ウォー』での配分はどうかというと、完璧です。

秀逸なギャグがたくさんあるというのに、『アベンジャーズ』『エイジ・オブ・ウルトロン』では見られなかった、「コメディのリズムに支配されていないシリアス」「切実なカタルシスが、贅沢なまでにしっかりと機能しています。

特にキャプテン・アメリカの登場シーン、ソーの参戦シーン、そしてサノスにまつわる全てのシーンが放つエネルギーは鳥肌もので、「そうそう、こういう『アベンジャーズ』が見たかったんだよ!」「こういうのをもっと早く見せてくれよ!」と心の中で叫んでしまいました。

 

ストーリー・キャラクター編及びサノス編へ続く

よくわからない感動『宇宙人ポール』感想

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概要

監督 グレッグ・モットーラ

キャスト

サイモン・ペッグ ニック・フロスト セス・ローゲン

ジェイソン・ヘイトマン クリステン・ウィグ ブライス・ダナー

シガニー・ウィーバー

 

あらすじ

イギリス人SF作家のグレアム・ウィリー(サイモン・ペッグ)とそのオタク友達で親友のクライヴ・ゴリングス(ニック・フロスト)は、コミコン・インターナショナルに参加するためにアメリカを移動しながら、UFOスポットを観光していた

走行中、後ろから追い抜いてきた車が事故を起こすのを目撃した二人は様子を見に行くが、そこにいたのはグレイ型の宇宙人・ポールだった

 

感想

なんか泣いちゃうんですよ、この映画。

二回見て、二回泣きました。

(ちなみにこの二回の間が五年くらい空いています。)

号泣ってわけではないですけど、じんわりと。

理由はわかりません。

同じくサイモン・ペッグニック・フロストのコンビが参加した『ショーン・オブ・ザ・デッド』でもウルッと来ましたが、あちらでは自分が何に感動しているのかがはっきりとわかりました。

でも本作ではわかりません。

なんか泣けるんです。

なんだろう?

内容は、コミコンのためにアメリカにやってきたオタク二人組と母星に帰りたい陽気な宇宙人・ポール、ポールを追う捜査官たち、原理主義者の親子が織りなす追走劇コメディ。

パロディ満載で笑えますけど、ドラマ的な展開はわりと平坦で、泣くほど感動的なストーリーがあったか? と問われると答えにくい。

でも泣いちゃったんです。

それも、ポールが直接関係しているわけでもなく、「本編での出来事を経てこそ手に入れた結果」なのかどうかすらもそこそこ怪しい、ラスト直前のコミコンのシーンで。

「宇宙人に会って助けた」「彼女ができた」「死にかけた」とか色々あったけど、その影響はそんなにない、「純粋にコミコンと授賞式を楽しむシーン」で。

ひょっとしたら、「普通」だから泣いたのかもしれません。

生きがいとなる趣味があって、それを理解し合えるオタク仲間がいて、一緒に素敵な思い出を作った後に夢も叶えて……。

冒険の後のそんな「ありえる風景」に、しみじみと幸せを感じて泣いてしまったのかも。

あと、泣いたわけではありませんが、序盤と終盤に登場するタラ(ブライス・ダナー)関連のストーリーには感動しました。

かつてポールをかくまって看病し、そのことを周りから信じてもらえず、苦難の人生を送ってきたタラと、ポールとの再会。

そして、ポールが老いたタラに、別の惑星での新たな人生をプレゼントする。

このシークエンスが切なくて、胸打たれました。

 

評価:☆☆☆(5点満点)

結婚っていいよね『ゴーン・ガール』感想

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概要

監督 デヴィッド・フィンチャー

原作 ギリアン・フリン

キャスト

ベン・アフレック ロザムンド・パイク ニール・パトリック・ハリス

タイラー・ペリー キャリー・クーン キム・ディケンズ

 

あらすじ

結婚記念日の朝、ニック・ダン(ベン・アフレック)は、妻のエイミー(ロザムンド・パイク)が失踪したことを知る

マスコミや警察に容疑を向けられ、渦中の人となったニックは潔白を主張するが、まるで誰かに仕組まれたかのように、彼に不利な材料がそろっていく

 

※ここから先は重要なネタバレを含みます

 

感想

これ、予告が上手いですよ。

劇場で流れているのをなんとなく見た時は、こういう話だとは思いませんでした。

報道倫理や冤罪がテーマの一部なのはわかりましたが、もっとこう、等身大の「妻を失った男の苦悩」「濡れ衣を着せられた男の苦悩」を軸とした、地に足ついた話だと思いました。

それどころか、ひょっとしたらノンフィクションなのかもと思いました。

全然違いました。

しかしてその実態は、クズ夫と逝っちゃってる妻のクッソはた迷惑な喧嘩騒動ミステリー。

本編を観た後に予告を見ると、皮肉というか、ブラックユーモアにしか見えません。

この仕掛けはなかなか面白いです。

逆に、ミステリーの中身の方の仕掛けはわりと出オチだと感じました。

推理小説をまったく読まない僕でさえ、本編の方向性を理解したら、「妻が復讐のために夫をハメようとしている」という小オチと「妻が夫に惚れ直す」という大オチはすぐにわかりました。

だってそれしかないんだもん。

それでも全然楽しめたのは、本作が社会派エンターテイメントとして優れているからだと思います。

マスコミと司法の危険さ・脆弱さと、それらを利用して完全犯罪を成す知性の存在が、「女性が男性を冤罪に陥れるのは容易い場合がある」という怖すぎる事実を織り交ぜて描かれるのがゾクゾクします。

「ヒエーッ!」ってなります。

エイミーがサイコパスではなく、いわゆる「毒親」によって作られた後天的なソシオパスなので、完全にファンタジーな存在ではないというのもいいですね。

ニックとエイミーの病みきった関係と、我々が住む現実社会の夫婦生活における妥協・すれ違い・非理解との垣根は思ったよりも低いということを思い知らされます。

また、ニックが本当にダメ人間なので、彼が理不尽な目にあっていてもある程度は許容できるというのも楽しめる一因だと思います。

ベン・アフレックの「ボサッ」とした顔、ハマり役すぎです。

動機付けや展開がところどころ極端だったり強引だったりして、漫画的ではありますが、筋は通っているので、芸術作品ではないと割り切れば、完成度は非常に高いと感じます。

ところでヤンデレっていいですよねえ。

 

評価:☆☆☆☆(5点満点)

 

スタイルを賭けた戦い『LUPIN THE Ⅲ 次元大介の墓標』感想

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©テレコム・アニメーションフィルム/小池健/モンキー・パンチ

 

概要

監督 小池健

原作 モンキー・パンチ

キャスト

栗田寛一 小林清志 沢城みゆき

山寺宏一 尾花かんじ

 

あらすじ

お宝「リトルコメット」を盗むため、東ドロアのマランダ共和国大使館に忍び込んだルパンと次元は、謎の男から狙撃されてしまう

摘出した弾丸は、以前次元が防げなかった、東ドロアの歌姫・クイーン=マルタ暗殺に使用されたのと同じものだった

凄腕の殺し屋・ヤエル奥崎に狙われていることを知った次元は、彼と対決することになる

 

感想

僕は初期のテレビシリーズや映画を『ルパンVS複製人間』しか見たことがないお子様なので、今回の大人向けルパンはなかなか新鮮でした。

いやー、めちゃくちゃかっこいいですねえ。

慣れ合わないアウトローたちの乾いた関係と、そこから織りなされるクールな掛け合いは、まさにハードボイルドといった感じです。

ただ、「これこそが本来の『ルパン三世』」と言い切っていいのかどうかはよくわかりませんけどね。

モンキー・パンチ氏が『トムとジェリー』が原型だとおっしゃる通り、ギャグが盛り込まれたノリもルパンの重要な要素だとは思います。

しかし、本作公開以前の10年間ばかし、明らかに「行き過ぎたギャグ」が詰まった話が多かったのもたしかなので、ここでガツン! と「ハードボイルドな『ルパン三世』」の一つの完成形を仕上げてみせた意味は大きいですよね。

個人的な好みとしては、今後もこういうのばっかりを見たいです。

次元ってやっぱ相当かっこいいですよね。

自分的には、日本の漫画・アニメのキャラクターで一番かっこいいかもしれない。

今作は、「金」でも「正義」でもなく、次元大介という男の「プライド」をめぐるお話。

そしてたぶん、「ロマン」をめぐるお話。

ルパンと次元の共通点って何かって考えた時に、それは「ロマン」じゃないかなって思うんですよね。

ルパンの場合、ロマンは「お宝」と「女」そして、「何でもできる自分(夢を見ない自分)」。

次元の場合、「スタイル」

次元大介はヒーローではない。

しかし、一人の女を守れなかった後味の悪さは、古風なリボルバーへのこだわりと同じように、彼のスタイルとして彼を動かしているのかもしれない。

そんな次元のスタイル(=ロマン)を、同じくロマンに生きるルパンが最高の形でサポートする。

僕はこの作品をそんな風に捉えました。

強迫的なこだわりを持った、敵のヤエル奥崎も魅力的。

やっぱり、こういう癖があるヴィランって必要だと思います。

名前もいい。

「ヤエル奥崎」。

「ヤエル山崎」でも「ノエル奥崎」でもダメ。

声に出して言いたい。

「ヤエル奥崎」。

 

評価:☆☆☆☆(5点満点)

ジャレッド・レト、日本を知る『アウトサイダー』感想

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 ©Linson Entertainment/Waypoint Entertainment/Netflix

 

概要

監督 マルティン・サンフリート

キャスト

ジャレッド・レト 浅野忠信 椎名桔平

忽那汐里 大森南朋 田中泯

Netflixオリジナル作品

 

あらすじ

刑務所で捕虜となっていた米軍兵士ニック(ジャレッド・レト)は、そこで出会った清(浅野忠信)と助け合って、出所することに成功する

ニックは清が所属するヤクザ組織の一員となり、日本の裏社会と関わっていく

 

感想

外国映画にしては、日本の描写にほとんど違和感がないのが心地よかったです。

サイバーパンクで忍者アイランドな「謎日本」もそれはそれで嫌いではないんですけど、今回はそういうのはほぼナシです。

日本人の日本語も完璧です。

ただ、舞台が終戦直後の大阪なので、時代考証とか関西弁のイントネーションとかを掘り下げると、間違っている部分もあるのかもしれません。

僕は気になりませんでした。

あと、画がすごく美しい

青のフィルター入れてる? のかどうかよくわかりませんけど、暗めで落ち着いたトーンが、過度にオリエンタルだったりエスニックだったりしない、「山の国・日本」ならではの風景を際立たせています。

外国人から見たら「異国情緒」、日本人から見たら「古き良き日本」を感じられる画作りをピンポイントで当ててくるのはすごいと思いました。

さて、ストーリーですが、完全に文化解説です

ヤクザというものの性質(ひいては日本人の性質)を、かつて日本と敵対した外国人(アウトサイダー)が学び、慣れ、同化する。

基本的にはそれだけです。

また、『アウトレイジ』シリーズのようにヤクザに新たな切り口から触れるというわけでもなく、しごくプレーンな「フィクションのヤクザ」が中心となるので、外国人が鑑賞するならわかりませんが、日本人がこの作品に独自の意義を発見するのはちょっと困難だと思います。

「同化する文化の内容」ではなく「同化することそのもの」に目を向けてみても、どうにも既視感が強いしなあ。

オンリー・ゴッド』みたいに、異国が舞台であることとは別に、主人公にわかりやすい個人的なストーリーラインがあった方が、よかったのかな。

まあ僕が気づいていないだけで、もうちょっと深い見方ができるのかもしれませんが……。

しかし画が綺麗だと、画そのものを楽しめるってのはあると思います。

役者さんたちの繊細で自然な演技は、ストーリーを横に置いておいても、しみじみと楽しめました。

椎名桔平氏と浅野忠信氏が義兄弟というだけでも、満足です。


評価:☆☆(5点満点)