富とジェリー

富を得たジェリーは変わってしまった。

悪役考察・第2弾『大友』(『アウトレイジ』のもう一つの見方)※追記・修正

大友

本名:不明

登場作品:『アウトレイジ』『アウトレイジ ビヨンド

大まかな概要:

関東一円を取り仕切る巨大暴力団「山王会」の下部組織「池元組」のさらに下請けにあたる「大友組」組長

長年、池元のいいように利用され、彼の身勝手さに耐えてきたが、本家が外様である村瀬組との関係を池元に注意すると、大友は抗争を装った陰謀に巻き込まれてゆく

 

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※ここから先は映画『アウトレイジ』及び『アウトレイジ ビヨンド』のネタバレをほんの少し含みます。

 

任侠を美化せず「全員悪人」をテーマとする『アウトレイジ』シリーズにおいて、大友は数少ない昔気質かつ義理人情に厚いヤクザであり、群像劇である本作の中で便宜上の主役でもあります。

しかし、彼もまた犯罪者であり、悪人と呼んでも間違いはないです。

大友の人物像における興味深いポイントは、彼がこれまでビートたけしが自身の作品で演じてきた役柄とは真逆の死生観を持っているという点です。

ソナチネ』の村川や『HANA-BI』の西は生きることを達観し、無意識に死に場所を求めていました。

「あんまり死ぬの怖がると、死にたくなっちゃうんだよ」に代表されるそのスタンスが北野武監督の作風であり、彼の演技における唯一無二の空気感にも繋がっていました。

ところが『アウトレイジ』の終盤、大友は片岡刑事(小日向文世)に説得され、仲間と共に散ることではなく醜くも生きながらえることを選択します。

この変化は大きいです。

また、続く『アウトレイジ ビヨンド』でも、片岡の策略により結局は前線に戻ってくるものの、木村(中野英雄)から山王会への復讐を持ち掛けられた際には「もう疲れたよ」とこぼし、非常に消極的でした。

抗争がひと段落した後も、関西花菱会からいいように情熱を利用され続ける木村とは対称的に、大友はひっそりと身を潜め、韓国に逃亡します。

年齢に伴い北野武自身の考え方が変わってきたからなのか、『座頭市』をのぞいて初のエンターテイメント作品であるからなのかは分かりませんが、とにかく大友の行動は異色づくしです。

僕が面白いと思ったのは、西野(西田敏行)・中田(塩見三省)vs大友・木村による怒鳴り合いのシーンの撮影において、西田氏がアドリブで「腐れ外道!」と大友に言い放った際、北野氏が「そうなんだよ、外道なんだよなあ……」と納得していたというエピソード。

もちろん、(一般人には手を出さないとはいえ)無慈悲に人命を奪いまくる大友の所業自体が「外道」であることは間違いないんですが、それだけではないと思うんです。

作中、大友の人格に対して罵声を浴びせかけた人物がもう一人います。

片岡の後輩にあたる刑事・繁田(松重豊)です。

出所時に「お務めすんだからってカタギ面か!?」と釘を刺すなど、彼の大友への接し方は非常に厳しいものでした。

片岡の策略にハマり木村に後押しされるまで、大友は真っ当に生きるつもりでしたから、この発言は一見、的外れのようにも思えます。

しかし、その後すぐに大友は、韓国フィクサーの元で女性に身体での接待を受けそうになっています。

売春が必ずしも悪とは言い切れないし、ここで大友は接待を断っているのもたしかですが、もうヤクザを辞めたい大友の向かう先にもこのような世界が当たり前のように広がっているわけで、そういう意味では「お務めすんだからカタギ面」は間違っていないともいえます。

さらに大友は、花菱会の老獪な策略にもかなり早い段階から気づいていると思われる描写が多々あり、それを踏まえると、骨の髄までむさぼられてゆく木村を説得もせずに見捨てたともとれます。

そもそも山王会加藤派、山王会旧富田派、花菱会、木村、警察による様々な思惑が錯綜する中で、大友だけが韓国フィクサーという海外勢力を後ろ盾に持っており、片岡が用意したゲームの盤上からいつでも離脱できる状態でした。

何が言いたいのかというと、仁義の下に殺戮の限りを尽くす「外道」ではあるが、落とし前をつけることで筋を通してきた彼の「前世」たちと比べて、捨て身や死への覚悟はありつつも、それを回避する立ち回りが実はできたり、「お務めすんだからカタギ面」ができる大友は、見方によってはさらに別のくくりで「外道」であるとも思うのです。

『最終章』のネタバレが許される頃合いになってきたら、また少しだけ追記・修正します。

画像引用元・権利者:オフィス北野/ワーナー・ブラザース

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