悪役考察『グランド・モフ・ターキン』(銀河で二番目に恐れられた男)
グランド・モフ・ターキン
本名:ウィルハフ・ターキン
登場作品:『スター・ウォーズ』及びその関連作品
大まかな概要:
銀河帝国において皇帝に次ぐトップクラスの影響力を誇る総督
残忍かつ怜悧な頭脳を持つ卓越した軍政家で、宇宙要塞デス・スターの建造監督及び司令官も務める
※ここから先は映画『スター・ウォーズ』シリーズ及びその関連作品のネタバレをほんの少し含みます。
『スター・ウォーズ』シリーズにおいて、残虐な独裁政治を敷く分かりやすい悪役「銀河帝国」。
皇帝の下、銀河帝国を分割統治するモフたちの頂点に君臨し、別格の権力を持つのがグランド・モフです。
ウィルハフ・ターキンは初代にして実写本編の中では唯一のグランド・モフであり、というよりこの役職はほぼ彼のために作られたといっても過言ではなく、それほど軍に置けるターキンの立場は周りと異なります。
惑星を跡形もなく消し去る超兵器「デス・スター」は、皇帝の掲げる恐怖政治のひとつの完成系でありシンボルでした。
その破壊規模と牽制力だけをとってみても、デス・スターを意のままに操る権限を一介の総督が手にしているというのはどう考えても異常です。
そしてターキンはその権限をフルに利用し、顔色を変えずに大量虐殺を命じることができる冷酷な男。
瞬間的には皇帝以上の力を手中に収めていたと捉えることもできますし、ターキンと初代デス・スターの登場期間がもっと長ければ、現皇帝を脅かす存在にも十分なり得たと思われます。
また、ターキンは作中で唯一、皇帝以外でダース・ヴェイダーに命令をすることができた人物です。
しかもヴェイダーはターキンの言葉を従順に聞き入れており、軍人といえども自らの信念を優先するヴェイダーをそうさせるということは、彼の思想的な尊敬を勝ち得ているということを意味します。
他と一線を画す絶大な力を有し、また、ジェダイでもシスでもないのに暗黒卿に信頼を置かれるターキンは、シリーズでも例外中の例外、極めて特殊なポジションにいるキャラクターだといえます。
何故、ターキンは他と違うのか。
メタフィクショナルな視点から見れば、彼は第1作『スター・ウォーズ エピソードⅣ新たなる希望』またの名を『スター・ウォーズ』の黒幕であり、後にシリーズが長期化してダース・ヴェイダーが台頭し、ジェダイとシスの因縁というストーリーのバックボーンが明確化する前に現れた存在でした。
故に「純粋な軍人」「戦闘をしない悪役」という特徴も含め、彼の個性はサーガ全体から独立した世界観の名残りであると考えられ、もし、デス・スターの司令官というアイコンや、名優ピーター・カッシングが演じたという事実がなければ、その後はもっと浮いた登場人物として扱われることとなっていた気がします。
さて、『スター・ウォーズ』のキャラクターの特徴として、メディアミックスによってどんどん設定が付加されるというものがあります。
重要人物ながら本編での登場シーンが少ないターキンは、ノベライズやカートゥーンによってその活躍が盛りに盛られまくっています。
『フォースの覚醒』の制作に合わせて、膨大な数のノベライズに関しては、あくまで外伝でありパラレルワールドであると位置づけられた「レジェンド」と、正式な本編のスピンオフにあたる「カノン」に分けられ整理されましたが、レジェンドとカノンのどちらにおいても、ターキンは帝国の実質的なナンバー2として描かれることが多く、また、皇帝と個人的に親しくしている様子も見受けられます。
指揮系統にもよりますが、上位宙域を管轄しているとはいえ決して最上位の役職ではないグランド・モフの一人が、このような個性的な立ち位置と上述したような強大な権力を手にしているということは、彼が組織を超越した存在、個人として別の枠組みで評価されている人物であるということを想像させます。
そんな枠組みはプリクエルではシスしかありえなかったわけですが、事実としてターキンはシスではない。
つまり、ターキンのカリスマは純粋に人格と能力に起因するものであって、その点がノベライズでは突き詰められています。
ターキンの内面を掘り下げるにあたっては、デス・スターが象徴するイメージがそのまま投影されており、それはすなわち「恐怖による圧政」です。
特に、抗議する民衆の上にそのまま宇宙船を着陸させるという末恐ろしい暴挙は、レジェンドでのできごとといえどもターキンの人柄を端的に表しており、彼がある意味、皇帝やヴェイダー以上に銀河帝国のナチス的思想を代表するキャラクターであることがよく分かります。
最近発売されたカノン『ターキン』では、彼の生い立ちや人となりをより深く探求することができます。
ターキンはアウターリム(銀河外縁部)の惑星エリアドゥ出身の地方貴族であり、ナブー出身の皇帝、タトゥイーン出身のヴェイダーと合わせて、これで銀河帝国を支配する主要三幹部全員が田舎の出身であることが判明しました。
彼の家では時期が来るとある洗礼を受けることとなっており、少年期のターキンも大叔父のジョヴァに連れ去られ、キャリオンと呼ばれる危険地帯でサバイバルを余儀なくされます。
そこで目にした弱肉強食の世界が、彼の思想の礎になっていることは明白でしょう。
また、優秀な判断力を駆使して共和国時代のジェダイを救っていたこと、演者どうしが盟友でありながら本編での共演はなかったドゥークー伯爵と関わりを持っていたこと、実は戦闘にも秀でていたことなど、『ターキン』では彼の新たな一面も垣間見ることができます。
もちろん恐怖主義も昔から健在で、海賊を拘束した船を少しずつ太陽に近づけなぶり殺すという処置には冷え汗がでてきます。
さらに、議員時代の皇帝からすでに目をかけられていたことも描かれており、そのことを踏まえると、やはりターキンはシスとはまた異なる特別な才能を宿しており、皇帝の直属の弟子であるダース・モールやダース・ティラナスとも比較にならない種類の寵愛を受ける場所に最初からいたようです。
画像引用元・権利者:ルーカスフィルム/ウォルト・ディズニー・カンパニー
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