読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

富とジェリー

富を得たジェリーは変わってしまった。

スター・ウォーズ『フォースの覚醒』が賛否両論を呼ぶ理由の推察

考察 映画 洋画 ディズニー

昨年最大の話題作となった映画『スター・ウォーズ』シリーズ最新作『フォースの覚醒』。

さすがスター・ウォーズだけあって社会現象規模のムーブメントを巻き起こしていましたが、公開後は称賛と同時に否定的な意見も多く目につきました。

世界中で大ヒットしておきながら、どうして賛否両論の熱い議論が繰り広げられるのか、個人的な所見を大いに含めながら解説していこうと思います。

スター・ウォーズ』を見たことがない方にとっても、このシリーズの特性を理解して頂くきっかけにしてもらえたら幸いです。

 

f:id:penguinoutrage:20160718093252p:plain

 

1.基本は「賛」の方が多い

『フォースの覚醒』は基本的には絶賛されています

世界中で大ヒットを記録しただけでなく、大手格付けサイトによる判定も軒並みかなりの高評価で、生みの親であるジョージ・ルーカスでさえ賛辞のコメントを述べています。

多くの不安要素を抱え、かつ強い制約とプレッシャーを受ける『スター・ウォーズ』の新作でこれほどの結果を残したということは、ひとまず本作は大成功だといえるでしょう。

なら、どうして賛否両論が拮抗しているような印象を受けるのか

ネットなどでは「なぜ不評なのか」「なぜ駄作なのか」というように、まるでヒットもせず評価もされていない作品のように扱われていることも多く、僕も友人に「評判悪いらしいね」と言われて驚きを隠せませんでした。

評価における実際の割合と認識がこれほど食い違うのを目の当たりにした経験はほとんどありません。

どうしてこのような現象が起こるのか。

恐らくその理由は作品そのものの特性にあります。

 

2.コンテンツ自体がマニア向けである

スター・ウォーズ』といえば、SFアドベンチャーの代名詞どころか映画の代名詞といっても過言ではないくらいの人類史に残る名作です。

なのでそもそもファン自体の絶対数が桁違いに多い

ということは、ファンによる批判意見が割合はどうあれ絶対的に多くなるのは自明の理です。

そして『スター・ウォーズ』の場合はそのファンによる批判意見の一つひとつが具体的になりやすい

世界観や登場人物などの設定が『指輪物語』並みに膨大であることからも分かるように、このシリーズは一般層にも広く知られた超世界的な映画でありながら、作品の性質としてマニア気質のファンが非常に多いのです。

マニアックであるということ=こだわりがあるということであり、こだわりがあるということ=批判に内容があるということです。

つまり、肯定的な人間の方が相対的な数では上回っていても、否定的な人間の感想の方が具体的に構築されやすく、しかも絶対数そのものはきっちり存在しているものだから、爪あとを残しやすいのだと思われます。

 

3.「新三部作」をどう捉えるか

次に『フォースの覚醒』がどのような位置づけの映画なのかを確認していこうと思います。

本作は『スター・ウォーズ』シリーズの第7作であり、作中の時系列でも七番目にあたります。

有名な話ではありますが、このシリーズは元から九部作構想で練られており、ジョージ・ルーカス監督の判断によって「4~6」の旧三部作(オリジナル)が先に作られ、後に「1~3」の新三部作(プリクエル)が作られました。

我々若い世代からすれば、リアルタイムで直接スクリーンに触れた思い出があり、映像も真新しく、アクションもスタイリッシュだった新三部作の方が親しまれている印象ですが、実は従来のファンや批評家による評価は新三部作の方が圧倒的に低いです(僕はどっちも大好きです)。

『ピープルvsジョージ・ルーカス』なんて映画が撮られて「新三部作をなかったことに!」なんて唱えるような人たちが首をそろえるほどだったりします。

まず、どうしようもない要素として、神格化された旧三部作の脚本にはどうしても追いつけないという点、旧三部作のソフト版において一部ファンに蛇足とも叫ばれる修正を重ね、なおかつオリジナルバージョンを販売しないルーカス自身への風当たりがもともと強いという点などの土壌が存在するのもたしかです。

ですが、作品そのものにおいても新三部作が旧来のファンに受け入れられなかった点は多く、例えば、CGを多様したほぼアニメーションに近い映像表現、暗い雰囲気、冒険要素の少なさ、ジャージャー・ビンクスの存在などがそれにあたります。

ディズニーによる買収をきっかけにルーカスが製作を離れた(実質追い出された?)『フォースの覚醒』ではそれら過去のマイナス要因は明らかに反面教師とされており、CGを極力使わずにどこまでも実写表現にこだわって撮影され、雰囲気は明るくなり、脚本も冒険要素が全面に押し出されたものとなっています。

つまり、あえてあけすけな言い方をしてしまえば『フォースの覚醒』は新三部作のアンチが作っているのです。

特に顕著なのはライトセーバー戦。

『フォースの覚醒』でのライトセーバーを用いた戦いはスローで泥臭く、とてもスタイリッシュとは呼べないものとなっています。

これは新三部作の超高速で回転しまくり、フェイントをかけまくるバトルに対して「あれはダンスだよね」と暗に言い切っているようなものです。

とにかく『フォースの覚醒』とここから始まる更なる三部作は、旧三部作ファン(≒新三部作アンチ)が製作した原点回帰であり、同時に新三部作の不評に対する一つの返答でもあるのです。

もちろん、排他的な考えとは無縁で、新旧どちらも愛しているというファンも大勢いますが(僕もそうです)、評論の参考としてこういう対立構造が根っこに存在しているということを知っておくと便利だと思います。

 

4.ルーカスの手から離れた利点と欠点

旧三部作から新三部作へ、そして再び旧三部作に回帰したアプローチへ、このように方向性が極から極へと揺れ動いたわけですから、賛否両論の状況が生まれるのはある意味当然だといえます。

「ストーリーが旧作の焼き直しだ」「メカに魅力がない」などという批判意見を特に多く目にしますが、それに賛成するかどうかは別として、そのような意見が発生するのは、旧三部作に寄り添うことに振り切ったスタイルや、ルーカスがいなくなったことによるリスクでしょう。

それに加え、本作から新たに取り入れられた要素も人を選ぶものが多いです。

黒人と女性が主役だからどうたらという意見に関してはあまり触れたくないので無視するにしても、カイロ=レンのキャラクターやある人物の衝撃的な末路などは受け入れられるファンとそうでないファンがいるはずです。

でも僕としては、もう少し深層心理に迫った考察も可能だと思っています。

ここからはかなり個人的な推測に入るので、興味のある方だけお付き合いください。

僕は「ルーカス感」がなくなったことも批判が起こる理由ではないかなと感じています。

ジョージ・ルーカスが監督・脚本を担当したのは1~4の計4作ですが、残りの2作においても彼は最大の指揮権と影響力を持っていました。

スター・ウォーズ』はその絶大なヒットと関連商品の版権収入により、第1作と今話題にしている第7作目以降の作品以外はハリウッドではなくルーカスのポケットマネーで製作されており、ある意味ルーカスのルーカスによるルーカスのための映画とも呼べます。

つまり、暗かろうが、冒険要素がなかろうが、観客にウケなかろうが、それがルーカスが空想した宇宙なのならば正解ともいえるわけです(いえるだけですけど)。

実際、九部作の構想は大まかにしか決まっていなかったとはいえ、サーガの構造上、「1~3」(新三部作)が政治劇になることに関してはほとんど変更しようがなかったと思います。

それを「暗くなるから」といって避けてしまったら、それはもう「遠い宇宙のどこかで起こった話」ではなく、完全に「映画」となってしまいます。

もちろん、実際には映画なのですが、ファンではなくジョージ・ルーカスという一人の男の妄想と投影を基軸として制作されることで、単なるフィクションではなく独立した「神話」に近いものが成り立っていたというのも恐らく事実です。

ルーカスが製作を離れ、その「軸」がなくなってしまったことが、地味に色々影響し、批判に繋がっているのではないかな、なんて勘ぐってしまうわけです。

僕は『フォースの覚醒』が大好きだし、完璧と評価してもいいと思います

CGだらけの過剰表現をやめ、実写撮影にこだわったのは絶対に正解だと思うし、エンターテイメント性抜群かつサービスに富んだストーリーもこれぞファンが求めていたといえるものです。

これらはルーカスがいなくなったことによる利点です。

ですがその代償として、完璧だからこそ「ファンの目を意識している何者か」がどうしてもうっすら透けて見えてしまうことへの無意識の嫌悪感が、具体的な批判意見と合わさって具現化することで、一つの体系的なアンチ層を形作っているんじゃないかな、という気もしてくるのです。

 

5.まとめ

とにもかくにも新シリーズは始まったばかりです。

ファンのためになるべく手堅く作られた本作とはうってかわり、現在撮影中の「エピソードⅧ」がやりたい放題、とまではいかなくてももう一歩踏み出た内容になる可能性は十分あります。

そのバランスが完璧なものになれば、今までよりさらに素晴らしい作品になることは間違いありません。

楽しみに待っていましょう。

画像引用元・権利者:ルーカス・フィルム/ウォルト・ディズニー・カンパニー

 

(関連記事・その他の人気記事はこちら↓)

penguinlove.hatenablog.com

penguinlove.hatenablog.com