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富とジェリー

富を得たジェリーは変わってしまった。

『タンタンの冒険旅行』と日本人

考察 海外の反応 漫画・アニメ

タンタンの冒険旅行とは、1929年から50年近く連載されていた、ベルギー発の大人気コミックです。

少年ルポライタータンタンが、様々な事件や陰謀を追って、世界を飛び回る大冒険が描かれます。

作品の性質上、多くの国や人種が入り乱れて登場する本作ですが、今回は我々日本人が、その中でどのように描かれているのかについて考察していきます。

 

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1.日本におけるタンタン

世界的に有名な『タンタンの冒険旅行』ですが、日本でも大変人気があります。

先の映画化の前からその存在を知っていたという方はたくさんいるのではないでしょうか。

かなり大型の本だからか、本屋ではあまり見かけませんが、図書館に置いてある漫画の代表として、学生時代に手に取ったことがある人は多いと思います。

邦訳版は、時系列がバラバラで刊行されている点が若干分かりにくいものの、翻訳自体は秀逸なデキとなっており、「大人でも子供でも楽しめる作品」のクオリティが保たれたものとなっています。

※追記:最近『タンタンの冒険』と邦題が改題され、順番も時系列に沿うよう修正されたようです。

 

2.タンタンにおける日本

そんな、現代でも世界中で愛されている『タンタン』ですが、連載期間の半分はもろに戦争と植民地競争の時代です。

最初期の頃には、プロパガンダとまではいかなくても、ドロドロの対外感情を反映した描写が結構見受けられ、日本人についてもそうでした。

『タンタン』の代表的な日本人キャラクターには、『青い蓮』に登場した悪役「ミツヒラト」と、『金のはさみのカニ』に登場した刑事「倉木文治」がいますが、このミツヒラトという人物の造形は凄まじいことになっています。

 

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(こんなんです)

 

『青い蓮』は、中国の麻薬市場を巡って、ミツヒラト、タンタンの宿敵ラスタポプロス、旧日本軍など、様々な勢力の思惑が錯綜するサスペンスなのですが、その内ミツヒラトは、見た目だけでなく中身も、別格に醜悪かつ下劣な人物として描かれています

逆に中国人は、『青い蓮』でもその後の話でもプラスのイメージで描かれていることが多いのですが、これは複雑な思想的背景があるからではなく、単に作者エルジェに中国人の親友ができたからというのが大きいらしいです。

作中では、その親友をモデルにしたキャラクター「チャン」が、タンタンと共に「中国人を差別する西洋人のバカらしさ」について語り合い、笑い合うなんていう素敵なシーンもあるのですが、その一方で日本人はガンガン差別的に表現されるもんですから、ちょっと不思議な気持ちになってしまいます。

これらの描写を極端な対外感情の発露や差別ではなく、あくまで当時の日本に対する政治的批判・風刺だとして受け止めるべきという人もいます。

たしかに一理あります。

しかし、僕は知っているのです。

今、手元にはないのですが、万博で手に入れた初期作『タンタン アメリカへ行く』のモノクロ版で、中国人も犬の頭が大好物のフリークとして描かれていたことを

つまり、メタ的な時系列で見ると

中国人を差別する

→中国人の親友ができる

→やっぱり差別はよくないね!

→じゃあ日本人差別しよう

という開き直りがまずあって、情勢批判なんてその理由づけに過ぎなかったのではないかという疑いが、どうにも可能性として残るのです

ちなみに修正前の初期『タンタン』では、黒人差別や動物虐待ととれるシーンもあったりします。

エルジェはそのことを深く後悔していたようですし、時代が時代なので別に非難しようというつもりはありませんが、まあ、悲しくはなります。

あ、倉木文治の画像は載せません。

ミツヒラトとほぼ顔一緒ですから。

 

3.発見

中期に登場したもう一人の日本人・倉木文治は、ミツヒラトと違って善人ですが、見た目はほとんど同じです。

吊り上がり気味の目と頬骨と受け口が特徴で、あんまりいい気はしませんが、これが当時の西洋人から見た東アジア人の率直な印象なら仕方ないです。

しかし、同じアジア人でもやはり中国人は比較的マシな容姿で描かれている瞬間が多く、その事実が、エルジェは『青い蓮』の時期以降も日本人を特別嫌い続けていたのではないか? という疑問を投げかけてきます。

僕は『タンタンの冒険旅行』が大好きなので、そんなことは信じたくありません。

そこで、まともな見た目の日本人キャラクターを、モブも含めて血眼になって探してみたんです。

そもそもアジア人自体が全然出番がないし、見つけたとしてもそれが日本人であると都合よく分かるとは限りませんから、無謀な挑戦でした。

でも、いたんです!

まともどころか作中のアジア人で一番と思われるルックスを持ち、しかも確実に日本人だと判断されるモブキャラが!

彼が登場するのは『ななつの水晶球』の冒頭、タンタンたちがボードビル劇場の舞台裏に侵入した場面の一コマです。

 

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イ、イケメン!

 

しかも、白人が総じて団子鼻か鷲鼻で描かれているのに対して、この整い方ですから、相当な男前なのだと思われます。

よかった!

エルジェが日本人への悪い感情を捨て去っていなかったとしたら、このようなデザインにはなりませんよね。

タンタンの冒険旅行』を愛する日本人の気持ちは、決して作者とすれ違ってはいなかったのです。

画像引用元・権利者:エルジェ/福音館書店

 

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