悪役考察『ユジーン・トゥームズ』(悲哀なき捕食者)
ユジーン・トゥームズ
本名:ユジーン・ヴィクター・トゥームズ
登場作品:『Xファイル』
大まかな概要:
一定の周期で休眠から目覚め、人の肝臓を食すミュータント。
体型を変化させることで隙間さえあればどこにでも侵入することができる、神出鬼没の連続殺人鬼。
※ここから先はドラマ『Xファイル』シリーズのネタバレをほんの少し含みます。
シーズン1の第3話というかなり初期のエピソードで登場を果たしたユジーンは、『Xファイル』初の「殺人鬼」であり、初の「突然変異体」です。
今後もこの二つの要素は、長期に渡るシリーズの中で何度も取り上げられますが、その記念すべき第一号を両方務めているのが彼なのです。
異星人の脅威とはまた違う、社会に潜む異能と異形の不気味さを、最初にもたらした存在でもあり、いろんな意味でシリーズの方向性の草分けだといえます。
また、もっと狭い「人の身体を食べなければ生きられないミュータント」というくくりで見たとしても、ユジーンのような者はその後何人かでてきます。
シーズン3第6話に登場する脂肪を食べるインカント、シーズン7第3話に登場する脳を食べるロブなどがそれにあたります。
しかし、インカントが自身の宿命を俯瞰した上で肯定していたり、逆にロブが食欲に抗おうとしていたのに対し、ユジーンにはそういう描写は全然ありません。
人でありながら人ではない生物の苦悩と葛藤や、食物連鎖の不可抗力といった、食人系キャラクターについてまわるテーマが、ユジーンのエピソードでは取り上げられないのです。
むしろユジーンは「完全な人外」の色が強く、「人」を装っている時と「動物」である時がはっきり分かれます。
ただし、殺す理由が人外でも、その手際や立ち回りはものすごく人間のサイコパス臭がするものです(特に捜査をかいくぐるときの冷静さ)。
「動物の宿命を背負った人」ではなく「人のような動物」であることに位置づけを振り切っているのと同時に、「動物のような人(サイコパス)」にも通じるのが彼の怖さなのです。
僕は日本的なホラーが大の苦手である代わりに、海外の直接的なスプラッタやモンスターをあんまり怖く感じないタイプなのですが、それでもユジーンは気味が悪いです。
話は戻りますが、彼がシリーズにもたらした方向性にはもう一つ重要な事柄があって、それは「真実はそこにある」という『Xファイル』の命題にも関わってきます。
すなわち、ユジーンという怪物の発見は、真実を解き明かそうとするモルダーと、それを認めようとしないFBI上層部の道を、今一度確実に分かつできごとだったのです。
そのような役割の前では、ユジーン自身の内面を掘り下げる必要などなかったのは当たり前かもしれません。
画像引用元・権利者:20世紀FOX
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