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『アウトレイジ ビヨンド』における恫喝は演技なのか?

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©『アウトレイジ ビヨンド』/オフィス北野

 

番外編でございます。

兼ねてより、僕はいろんなところでアウトレイジ ビヨンド』で描かれた西野と中田の、大友と木村への怒号は演技だと言ってきました。

彼らは本当に心の底から怒っていたわけではなく、「覚悟を試すため」また「頼まれた側として立ち回るため」にああしたのだと。

これは特に僕が思いついた解釈というわけでは決してなく、むしろ二回以上観た人の大方の感想であり意見であると感じています。

しかし、感覚的に納得いかないという人もいるかもしれないので、根拠を下に並べてみようと思います。

 

1.利用する気満々

そもそも、花菱会は最初から木村を利用する気満々です。

富田に加藤・石原体制を覆せるだけの覚悟と人脈がないことを見抜いた布施は、富田の裏切りを加藤に密告することで、山王会内部に疑心暗鬼をもたらします。

(さらに片岡が、出所した大友が石原を狙っているかのように演出することで、疑心暗鬼に拍車をかけます。)

西野の情報網から状況を見て取った布施は「で、どないするつもりや?」と訊ねます。

それを受け、中田が「一人、山王会に恨み持っとる奴おりまして。まあ、利用せえへん手はない思うとります」と答え、木村を利用することを提案します。

つまり、木村が山王会加藤派への攻撃の助力を花菱会に頼むことは、花菱にとっても「待ってました!」なチャンスというわけで、これに対して本音で怒ることはありません。

これが一番分かりやすい答えです。

 

2.別の理由で怒った?

一応、「大友を連れてきたから怒ったのではないか」「会長の盃を貰おうとしたから怒ったのではないか」という考え方もできます。

しかし、だとするとわざわざ「木村を利用しよう」という描写を入れる必要性がかなり薄いです。

花菱会に基本的にその気があることを描写しなくても、中田と木村のコネクションさえ描写しておけば十分だし、もっとシンプルな対立構造にして二度手間を削れるわけですから。

「すんなりいくと思った? いかないよ。障壁があるよ」という観客へのミスリードのための描写ととることもできなくはないですが、だとしてもその障壁は「策」である方が流れが自然ですし、「本音の怒り」であるならば、それが後の展開にまったく繋がっていないので、その部分だけチープに浮きすぎです。

 

3.言動の矛盾

西野と中田は、「大友を連れてきたこと」「会長の盃を貰おうとしたこと」に関係なく、「山王会を攻撃すること」そのものにも反発しています

これは彼らの前後の言動とはっきりと矛盾しています。

つまり嘘です。

 

4.「因縁づけ」のフォーマット

このシーンにおける西野と中田の台詞の本質は、「因縁づけ」もっといえば「あげあしとり」です。

きっかけがあって怒っているのではなく、怒るためのきっかけを探している

こういうシーンは『アウトレイジ』にもありました。

大友と水野たちは、(多少かっこつけてはいるものの)常識的な態度で謝罪をする木村に因縁をつけ、あげあしをとりまくって罵倒します。

そもそも実際は大友組の方から仕掛けているのにも関わらず。

何故こういうことをするのかというと、池元に、関内へのポーズとして村瀬といざこざを起こすようにと言われているからです。

つまり、「意図的に怒る理由」があるのです。

続編『アウトレイジ ビヨンド』でこのフォーマットが強化され、再利用されるというのはしっくりきます。

 

5.最後に

もちろんこの解釈が「絶対」とは言いませんし、人間の心理って複雑ですから、「瞬間的には本当に怒っていたのかも」と思ったりもします。

しかし、それでも九割方合っていると考えているので、それを前提として今後も『アウトレイジ』シリーズの考察を続けます。