悪役考察『池元』(ふてぶてしい隣人)
池元
本名:不明
登場作品:『アウトレイジ』
大まかな概要:
巨大暴力団山王会の直参幹部にして、池元組の組長
金と保身のために二枚舌を使い分ける下劣な男で、兄弟分の村瀬、子分の大友を酷使する
外様である村瀬との関係を本家から注意されると、大友に村瀬と軽いいざこざを起こすよう命令し、図らずも大抗争の火種を作ることとなる
©『アウトレイジ』/オフィス北野
※ここから先は映画『アウトレイジ』のネタバレをほんの少し含みます。
このシリーズに登場する多種多様な悪人たちの中でも、「私欲で動く」という点が最も押し出されているのが池元です。
大友(ビートたけし)や水野(椎名桔平)や木村(中野英雄)はもちろん、関内(北村総一朗)や布施(神山繁)のようなマキャヴェリストタイプの人間や、加藤(三浦友和)や石原(加瀬亮)や野村(大杉漣)のようなビジネスライクな人間でさえも、何かしらの美学や、「自分のやり方への誇り」みたいなものが垣間見えるんですが、池元にはそれがありません。
本当にただただ欲望の塊です。
たぶん、この人は作中唯一の天才タイプなんじゃないかなと思います。
他のキャラクターたちが技術として確立させている処世術を、わりと天然でやっている。
本能的な姑息さというか、その場しのぎ感が強い。
関内や加藤への言い回しと態度を見ていると、目下の立場に対してはもちろん、目上の立場に対しても、いわゆる「その場ではなあなあで収めてもらう」というごまかしと先延ばしのスキルを生来から持っていて、それを少年の頃から自然に使い続けているんじゃないかという気がします。
彼の無礼で、ぶしつけで、他人のことをまるで考えない悪童っぷりのツケが、ついにそのスキルの許容量を超え、関内、小沢(杉本哲太)、大友を動かすに至ったのが『アウトレイジ』なのかもしれません。
気になるのは、大友は彼の何に惹かれて子分になったのかというところです(小沢はなんとなく分かる)。
殺されそうになっても啖呵を切れることから、ある程度は武闘派の側面も持っていることが分かりますが、それでも詳細な部分に興味があります。