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悪役考察『ベイン』(精神力の化身)前編

ベイン

本名:ドレンツ(フルネーム不明)

登場作品:『バットマン』及びその関連作品

大まかな概要:

架空の国「サンタ・プリスカ」の牢獄で生まれ育った脱獄囚

高い戦闘力と知能を駆使し、史上初めてバットマンを引退に追い込んだ男

 

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©DCコミック

 

※ここから先は『バットマン』及びその関連作品のネタバレをほんの少し含みます。

 

ベインもまた、『バットマン』の悪役にしては、狂気の内容を端的に表しにくいヴィランです。

ただ、キャラクターとしてのコンセプトはわりとはっきり感じとることできます。

ベインが造形される上で念頭に置かれたコンセプトは、恐らく「最強」であることだと思います。

数多の荒くれ者たちを蹂躙できる「圧倒的肉体」

図書館並みの知識量を一目でインプットし、それを的確にアウトプットできる「天才的頭脳」

これらをプレーンなまでに兼ね備えているベインは、純粋に脅威です。

しかし、それらはベインにとって標準装備みたいなものです。

ベインが「最強」として創り出されたと僕が思う理由は、彼の「精神力」「啓示」です。

ベインは精神力の化け物です。

気が遠くなるような年月、潮が満ちる独房に幽閉されても、食いつなぎ、生き残り、それどころか瞑想によって己を高めるなど、その胆力は驚異的なものです。

 

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©DCコミック

 

どんな「物理的な死地」に追い込まれても、「意志の力」でそれを捻じ曲げ、欲しい物は全て手に入れる前提で生きている

土台の生命力やエゴも凄まじいですが、やはりそれを活かし、力づくで未来を掴み取る精神力が異常です。

その精神力の源となっているのが、ベインが深層心理で確信している「啓示」です。

父の罪を背負って牢獄で生まれ育つという凄まじい生い立ちを持つベインですが、ある日、未来の自分の幻想から「王」たる資格を説かれてからは、何かに導かれるかのように覇道を突き進み始めます。

やがて数々の奇跡を起こし、そのカリスマと人徳に魅せられた信望者たちを率いて、ついには脱獄を果たしたベイン。

彼の次なる目的は、克服すべき恐怖の象徴「バットマン」を破壊すること。

ベインはそれすらも達成してしまいます。

このように、ベインという男は「啓示を受け、それを精神力で具現化する存在」であり、そういう意味で「最強の男」なのです。

けれど、バットマンを一度引退に追いやった後の彼は、どうも位置づけがパッとしない気がします。

彼が「最強」だったのは、「王」としての啓示が、「バットマンを倒すキャラクター」としての作為的な啓示によって補強されていたからでもあります。

それがなくなった後の彼は、十分魅力的といえども、作家からしたら少し使い辛そうな印象を受けます。

また「外から来たヴィラン」ベインは、ゴッサムという街と根本的に色が合わないと思います。

 

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©DCコミック

 

天才であると同時に究極のエゴイストであるベインは、常に「最適解」をえげつなく突き詰めることができます。

ですが、『バットマン』の世界で重要なのは「答え」よりも「こだわり」であり、それを内包する狂気です。

ベインの揺るぎない信念も一種の狂気ではありますが、もっと複雑で多元的なルールが錯綜するこの世界において、美学を無視した「最適解」だけをストイックに掲げることは、むしろ「無粋」といえます。

ペンギンにゴッサムの特性について学ぼうとしていたりなんかもしたベインですが、そういうことをしている時点でズレているんだと思います。

このことはゴッサムでの在り方だけでなく、男女関係にもいえます。

ラーズ・アル・グールの娘・タリアは一度ベインと愛し合いますが、そのうち彼の無粋さを毛嫌いしだします。

ベインの能力は申し分なく、言動も何も間違っていないのに、彼のスタンスがタリアを不快にさせる。

ベインは男性のパロディともいえるかもしれません。

フィジカル、インテリジェンス、メンタル、カリスマにおいて境地に達していても、ロジックだけでは思うようにいかないのが他人でありこの世界。

それを体現し、それでも強固な意志で突き進むベインが僕は好きです。

いっそのこと「器用貧乏さ」をもっとクローズアップして、秋葉流や吉良吉影みたいなキャラに方向転換してもそれはそれで面白そうですが。

後編では、かなり以前別サイトに投稿した『ダークナイト ライジング』考察のリライトを載せようと思います。

 

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